「…と、まあそんなわけで、世界は玄冬のために温暖化の危機に瀕しているのです」 なにげなく偏りに満ちた世界情勢の説明のあと、白梟はすっきりきっぱり結論を下した。 第三話 ― 救世主の力 ― 「また貴方はそんな」 埒もないことを、と言いかけた黒鷹を、玄冬が遮った。 「…つまり、俺がずっと箱庭を見てるせいで、箱庭の温度が上がっているのか?」 「その通りです」 白梟が自信を持って断言する。 「ま、半分くらいは言いがかりみたいなもんだけどね。つくづく難儀だよね、君も」 「なにを言うのです花白。救世主たるあなたがそうやって…」 「だって半分くらいは科学が発展しすぎたせいだと思うんだけどね、僕は」 「だからそれは迷信だと何度も…」 不毛な議論にはまりつつある白組の傍らで、問題の玄冬はというと… 「俺のせいで……世界が…」 「あっ、コラそこで暗くならないっ! まったく真面目くんなんだから君は」 同じく不毛なループにはまろうとしていた。 その様子を横目にした花白の眦がぴくりとつりあがる。 「まあそんなわけでさ、君にここに居られちゃ困るわけだよ」 唐突に話の流れに戻ってきた花白は、玄冬に向かって言い放った。 「…花白…?」 呆然とつぶやく玄冬にむかって、一歩、二歩と歩を詰める。 「待ちたまえ、ちびっこ!」 動きを止めた玄冬の前に、黒鷹が割って入った。瞬間、玄冬の眼が助けを得たように安堵の色がよぎる。が、後半の台詞がいただけなかった。 「…私と玄冬の愛の生活を邪魔しようなんて100年早いぞ!」 「ちょっと待て、どこが愛だ!」 猛然と反発する玄冬。しかし黒鷹はどこ吹く風である。 「……ああ言ってるけど」 「…それはまぁ、いわゆるよくあるところのちょっとした照れ屋さんというやつだ。 なにしろ私と玄冬はこの数百年ふたりっきりの世界。邪魔する者もいないからあんなことやこんなことや…」 「――殺す」 滔々と続くしゃべりを断ち切るかのように、花白が低くつぶやいた。右手はすでに腰に伸びている。……目がマジだ。 「おおう、本気のようだね、ちびっこ。だが腐っても黒の鳥だ、そう簡単には」 ビーム!!! 言いかけた黒鷹の台詞をぶった切って、赤い光の束が空間を引き裂いた。 「ぅおうっ!?」 慌てて横に跳びすさる黒鷹。そのウェーブがかった紫の髪が、ちりりと焼けた。 「そう簡単には、何だって?」 凍りつくような笑みを浮かべて、花白が口を開く。その手には、銃口から細く煙を上げる、小さな白い武器が握られていた。 || TOP || |
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